お店の始まり
「最後の質問ですが、今回開業の動機は?」
個人事業主用銀行口座を作りに向かった窓口で、担当の銀行員さんからの問いかけ。
色々な思いが交錯するけどなんて答えたらよいのか..
「勤めていた会社が、コロナの影響で書類上閉業になったからです。」
驚いた顔の担当者。
「かしこまりました。手続きはこれで終了なのでまた後日ご連絡いたします。」
コロナが流行し始めたころ、私はパティシエとしてある会社に勤めていましたが、だんだん仕事の量が減り、勤務日数が減り、お給料も減り、長い休業状態に入りました。
借りている住まいの家賃は払えなくなるから、荷物はすべてレンタル倉庫に預けて、最低限の製菓道具と衣類だけを持って実家に引っ越し。
実家の近所を歩いてみると、開いているのかいないのか、よくわからないけど素敵なカフェの存在が気になり始めました。
偶然そのカフェのオーナーと以前会ったことがあることを思い出し、連絡を取り、その場所を間借りさせて頂く形で私がカフェを始めたことが、自分でお店を始めることのはじまりでした。
カフェを間借りさせて下さった方の宣伝力もあり、始めて間もなくあっという間にリピートして下さるお客様も付き、気がつけば勤めている会社も営業再開し、会社と自分のカフェ営業とで充実した時間を過ごしていました。
社長からの会社閉業の通知は、とても丁寧な口調であっという間のお話でした。もしかしてそんなこともあるのかもしれないな…と思っていたことでも、実際に起こると啞然とします。お客さんでいる時から好きで好きで、憧れて入った職場だったので、ショックでしたが、自分のお店を持つことも、製菓業界に入った時からの夢だったので、このタイミングで自分で頑張ろうと決めました。
あらゆる事が突然で、計画性もなくその場その場の判断が求められ、新しいことを始めるにはあまりにもお金がなさ過ぎて、なのに自分のカフェ営業で毎月メニュー替えをするために寝る間を惜しんで試作をしていた時期。目が回るほどに忙く、新たに学ぶことも沢山ありました。現在も相変わらず同じ状況ですが。
初めて間借りさせていただいた場所はその後、他の方が管理されることになったために利用できなくなり、私はお客様やカフェ営業を通して出会った友人に助けられて、また新しい間借のキッチンと出会いました。そして沢山のご縁を頂いて、自分のお菓子工房を持つことができました。
お菓子工房はお菓子を作ることに特化した場所なので、現在は工房でお菓子を制作して卸をしたり、間借のキッチンでカフェ営業をしたりしています。自分のお菓子工房がなかった時には間借のキッチンでお菓子を作るために、粉や砂糖、お酒類など、車がないので全て自転車に乗せて運び、何度も自転車のカゴやスタンドを壊して、カフェ営業当日も、仕込みの時間が限られているので心臓をドキドキさせて仕込みをしていました。自分の工房があるというのは本当にありがたい。
お店のためにとはいえ借金をすることには抵抗があるので、本当はお店を持ちたかったけど今の状況に落ち着きました。これからの目標は2-3年後には必ず飲食スペースのある店舗を借りられるようになること。
とても大まかにお話ししましたが、「手作りの店HANNAH」の始まりのお話です。
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